リアル生活保護 | 那覇市役所で生活保護を申請した No.2

リアル生活保護

那覇市福祉事務所(那覇市役所の保護課)に相談に行ってはみたものの、相談1日目は生活保護制度の概要についての説明のみで担当ケースワーカーすら決めてくれませんでした。

実は私が「所持金2000円あります」と本当のことを話しちゃったもんだから、
所持金が2000円あるなら明日までは大丈夫そうですね(資産の活用)」という感じで後回しにされ、正式な担当ケースワーカーが決まるのは翌日(の午後)になってしまった。

どうやら那覇市福祉事務所では正直に申告すると損をするようです。
仕方ないので2日目も那覇市役所に行ってきました。

 

担当ケースワーカーとの面談

今日こそは担当ケースワーカーに具体的な相談が出来る!と思ってたら大間違いでした。
相談1日目での会話内容が、担当ケースワーカーに引き継がれているようで、すでに「貸付けする前提」で話が進んでしまいます。

詳しくは動画にて会話内容をお聞き下さい。

担当ケースワーカーによると、
「1日あたり1000円の宿泊費 + 1日あたり1000円の生活費」を「保護申請の可否が決まるまでの日数分」を「1週間ごと」に貸し付けするそうです。
その貸付け金でドミトリー(相部屋タイプの簡易宿所)に泊まって、そのドミトリーに住民票を移して、その住民登録の住所を「居所」として調査を行う。との話でした。

そして保護が決定したら保護費から返済する。
という流れらしいです。

お金に困っている人は条件反射的に飛びついてしまう提案内容かも知れません。

ですが・・・

 

それ『借金』ですよ

生活保護の可否決定までは、申請日から14日以内、最長で30日かかります。

宿泊費+生活費の貸付け金が「1日あたり2000円」なので、
 
2000円x30日
=最大6万円の借金になります。
 
※貸付け金の返済期限は「翌月まで」です。

那覇市の住宅扶助費は、単身世帯だと最大で32000円支給されます。
ところが32000円という金額は【床面積が16㎡以上】という条件の時のみです。

16㎡以上→32000円
11~15㎡→29000円
7~10㎡→26000円
6㎡以下→22000円

もし宿泊したドミトリーが2人部屋だったら、1部屋の床面積は「割る2」で計算されます。
もし6人部屋なら「割る6」で計算されます。
部屋の広さを居住人数で割るんです。

居室を共用する者の間で生計の同一が認められない場合
基準額について居室を共用する人数で除した額等により認定すること。
(平成27年4月14日 社援保発0414第2号 厚生労働省社会・援護局保護課通知)

なお、ここで言う”床面積”というのはトイレ・キッチン・居間などの共有スペースも含んだ《生活空間》という解釈です。ただし収納スペースは含みません。

那覇市内で「1日1000円」で泊まれるドミトリーだと、1人あたりの居住スペースは最下ランクの平均6㎡前後が主流です。
単身世帯で6㎡以下だと住宅扶助費は『22000円/月』となります。

ちなみに保護費は《申請日まで遡って支給される》ので、初回の支給日は『約1.5ヶ月分』の住宅扶助費が支給される可能性が高いです。そして保護が決定したら、
 
22000円x1.5ヶ月分
=33000円
 
が初回の住宅扶助費として支給されます。

保護の開始時期は、急迫保護の場合を除き、原則として、申請のあった日以降において要保護状態にあると判定された日とすること。
(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)

ですが6万円の借金に対して『33000円』では足りません。
ですが借金は「翌月まで」には返済する義務があるので、どうしても【生活扶助費】からも支出する事態に陥ります。

私が動画内で「ドミトリーで満額出るんですか?」と訪ねたのは「満額の32000円が出るんですか?」という意味合いです。

 

なぜ貸付けするのか?

16㎡以上の賃貸物件は容易に見つけられます。もし普通にアパートで居宅保護となってしまうと「16㎡以上の物件」に対する住宅扶助費(32000円)を支給する事になります。
ですがドミトリーで「1人あたりの居住スペースが16㎡以上」なんていう宿泊所はまずありません。

那覇市福祉事務所は初回支給分の「16㎡以上→32000円」と「6㎡以下→22000円」の差額分を削減するために、敢えて「貸付け」という小細工をしているんです。

さらに、全2回にわたる相談の中で「一時的な居所の確保に必要な宿泊料等の支給」についての説明は1度もありませんでした。

生活保護の申請者が、やむを得ず一時的に上記の民間宿泊所等を利用し、生活保護が開始された場合は、その後に移った一般住宅等の家賃に要する住宅扶助費とは別に、日割等により計算された必要最小限度の一時的な宿泊料等について、保護の基準別表第3の2の厚生労働大臣が別に定める額の範囲内で支給して差しつかえない。
(平成21年10月30日 社援保発1030第4号の2)

担当ケースワーカーは、私がホームレスである(住居が無い)という事実を十分に把握しています。だからこそ「ドミトリーへの宿泊」を提案したんです。

ですが担当ケースワーカーは、本来であれば国民が享受できるはずの「一時宿泊費の支給」という制度を隠蔽して、敢えて貸付け(借金を背負わせる)ように仕向けました。
これは生活保護法 第9条 『必要即応の原則』に反しています。

生活保護法(必要即応の原則)
第9条 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。

「貸付け手法による初回支給費の削減」以外にも、那覇市福祉事務所には大きなメリットがあります。

・保護申請者の寝床と食事が確保されているので焦って調査を行う必要が無い。
・居所が確定しているので事務処理が容易になる。

那覇市福祉事務所側のメリットもありますが、お金に困っている申請者(とくにギャンブル・アルコール依存症者)にとっては「すぐに現金を入手できる」というメリットもあります。

一見すると「Win+Winの関係」のように見えますが、この運用方法には深刻な問題が隠されています。

■那覇市福祉事務所は「ズブズブ」で「なぁなぁ」な運用をしている(法律を守らない)
■もし保護申請が却下されたら『借金』だけが残る(保護申請者が債務者に変わる)
■本来であればプライベートが守られたアパートで居宅保護を受けられるのに、狭い部屋での共同生活を強いられる(精神的苦痛)
■国民に有りもしない生活実態を意図的に作らせるような運用は誠実さに欠ける(那覇市職員服務規程 昭和47年12月28日 訓令第16号 第2条 違反)
■そもそも『借金』が嫌いな人もいる(自由権侵害)
■『借金』によって立場が弱くなり保護申請者が萎縮してしまう(公権力への畏怖)

 
那覇市福祉事務所の運用はメチャクチャです

 

指示を鵜呑みにする必要は無い

担当ケースワーカーは尤もらしい顔をしながら様々な書類を提出させようとします。
なるべく福祉事務所側が有利になるように、なるべく多くの個人情報を集めて、何とでもコジ付けできるような状況を作る為に、申請者に余計な書類まで提出させようとします。
ですが、

生活保護申請に必要な基本書類は「保護申請書・資産申告書・収入申告書・同意書3枚」の計6枚だけです。

これら6枚は厚生労働省が法律等で定めた必須書類なので「第○号様式」という名前が付いており記載項目もちゃんと法律で定められています。
その他の様式番号が付いていない書類は、福祉事務所が案件管理する手間を省くために独自に提出させている書類なので、べつに提出しなくても調査や保護は受けられます。
ですので「提出しなさいと言われたから」といって全ての書類を揃える必要は無いです。

ただし生活困窮者の状態は人それぞれなので、申請者の状況によっては上記6枚以外にも提出すべき書類が有るかも知れません。
ですが全ては法律に基づいているので「なんとなく・それが慣習だから」という曖昧な理由は絶対に有り得ません。書類の必要性を見分けるには”根拠法”をあたる事で判断できます。

あと私は『那覇市に住民票を移してください』と言われましたが、生活保護法に【住民票】という概念はありません。有るのは「住所」と「居所」の2種類だけです。

住所」は住民登録された住所地のことで、その住所地を記録したものが【住民票】です。
その【住民票】を提出する事によって「住民登録された住所地」を証明できるわけですが、私の場合は既に『同意書』を提出済みなので、福祉事務所がその同意書を使って市民課に照会すれば済む話です。
福祉事務所はその《照会する手間》を省くために、申請者に「住民票を取って来い」と指示しているわけです。福祉事務所がいかに身勝手に図々しく指図してくる組織なのかが、これでお分かり頂けると思います。

居所」は、現実に生活している場所のことで、これを証明できる手段はかなり限られています。
私のようなホームレスの場合、例えばケースワーカーが目視で寝泊まりしてる場所を確認するとか、近隣住民からの証言だったりと、あくまでも「間接的な証明」しか出来ません。
それくらい”曖昧でフワッとした概念”という事です。
「居所」については様々な問題を含んでおり、法律にも明文化されていないので福祉事務所側もかなり悩む点です。

以上のことから、福祉事務所側が要求する事が全て正しいとは限らないわけで、指示(指図)を鵜呑みにする必要は無いのです。

 

感想

一連の面談動画でもケースワーカーは頻繁に嘘をついています。
嘘をつくと言うよりも、上司から「そう言え」って教育されているんだと思います。

公務員って息を吐くように嘘をつける人種なんだなと感じることが多々ありましたが、いちいち突っ込んでると話が先に進まないので敢えてスルーしました。
福祉の専門家でもない所員と水掛け論になっても面倒くさいだけですし、無駄に担当ケースワーカーの反感を買っても仕方ないので、深く突っ込んだ質問などは一切しませんでした。
結局、最後まで「ハイハイ」と話を聞いただけで相談が終了した感じでした。

 

学んだこと

受給者の声が小さい理由が分かった
インターネットを探してみても、なかなか現役受給者からの生の声が聞こえてこない。なんでみんな黙しているんだろ?とずっと疑問を感じていたけど、受給者の声が小さいのは【福祉事務所に対する恐怖心】と【受給者自身の無知】が原因だという事が分かった。

公務員は国民をバカだと思ってる
公務員は『どうせお前ら一般人は法律なんて知らないだろ?』って感じで平気で嘘をついてくる。
もちろん「カウンターの向こう側(保護課の内情)」までは分からないが、だからといって組織側の内情を保護申請者(国民)に押し付けてくるような運用は止めてほしい。

嘘つきに相談なんて出来ない
福祉事務所の所員はいくらでも騙してくるので『相談』なんて出来ない。
だからこそ申請者側が知識を身に着けて《相談じゃなくて要望を伝えるだけ》という形に持っていく必要がある。
だって公務員に質問しても本当の事なんて全然教えてくれないじゃん。貴方達の口から出てくるのは”嘘”ばっかりじゃん。

選択肢が無い
2日間に渡り2名の所員による面談(相談?)を受けたけど、結局『一時宿泊費の支給』についての説明は1度も出てこなかった。
生活保護は《申請主義》なので申請しないと何も支給されない。なのに支給制度の存在すら説明されなかった。

選択肢を潰される
私(Hiro)が求めているのは「保護」であって『借金』ではない。
でも『借金』という条件を飲まないと”調査が進まない”などと脅かされる。
これじゃぁ《貧困ビジネス》と何ら変わらないじゃん。

那覇市役所で生活保護を申請した No.3】に続きます。。。